「童謡・唱歌の世界」のMIDIの曲をBGMに使用させて戴きました。


アメリカ国立公園の旅(その1)

 2007年9月4日から17日まで,アメリカのワイオミング州にあるイエローストーン国立公園とグランド・ティートン国立公園への旅をしました。その旅行中の風景を水彩ペン画で描いたものを「アメリカ国立公園の旅(その1)」として、(その2)と共に再掲載致しました。
 2007年のアメリカの旅は、セントルイスに住む友人夫妻を訪ねたあと,デンバー経由でグランド・ティートン国立公園内にあるジャクソン空港へ飛び、ジャクソンホールの街でレンタカーを借りて、イエローストンおよびグランド・ティートン両国立公園内で1週間ほど滞在し,友人夫妻の運転で素晴らしい風景を見て回りました。幸い良い天気に恵まれ,その大自然の雄大な風景を見てきました。
 この地域は,国立公園内や周辺にある宿泊施設(ホテル,ロッジなど)の数が限られ,その収容力が足りないためか,日本からの観光ツアーは殆どなく,公園内で会った数人の日本人は個人で来た観光客ばかりでした。アメリカ人は日本のように観光バスで1泊ずつ泊まって移動するという観光旅行ではなく,同じ場所に4,5日から1週間ほど泊まる,あるいはキャンピングカーで宿営しながらゆっくり自然を観察し,レンジャープログラムを楽しむというタイプの旅行が好きなようです。また,アメリカの国立公園内には街や人工物を出来るだけ造らず,自然のままで保護することに徹しているようです。温泉がそこら中に豊富に湧いているのに,温泉の入浴施設や観光ホテルは殆どなく,日本人にとっては大変もったいないと感じる温泉地域です。


 公園内の草原や温泉地域に野生のバッファロー(America bison)の群がよく見られます。時には道路の上を悠然と歩いているバッファローの群を見掛けます。絶滅寸前でしたが,現在は3万頭までその数が回復したそうです。


グランド・ティートン国立公園

 グランド・ティートン国立公園はカナダ・ロッキー山脈の南に連なる山並みで,最高峰のグランド・ティートン峰(4000m)を中心に3,500m以上の山々が一列に並んでそびえています。
 1953年にパラマウント映画会社で製作されたアラン・ラッド主演の西部劇映画「シェーン」の舞台となった所で,その最後の場面で馬に乗って去ってゆくシェーンを,開拓農家の少年が「シェーン!カムバック」と叫びながら呼び戻す声が遙かなる山々にこだまして聞こえるという,その詩情あふれる最後の場面の背景にグランド・ティートンの山々が写っています。
 断層に沿って隆起した山並みなので,山の手前には大小数々の湖が並び,そこから流れ出たスネーク・リバーが大草原の中を南に向かって流れています。イエローストーン国立公園と同様,野生生物の宝庫で,バッファローやムース,エルク,ミュール鹿,グリズリー熊,ピューマなど大型のほ乳類や,コヨーテ,カワウソ,ビーバー,200種以上の鳥類などが棲息しています。
公園内の道路は野生動物の食草となっている草原の中を,グランド・ティートンの山や湖を見ながら走りますが,草原には香りの良いセージ(sagebrush)の低木が一面に生え,その淡緑色の向こうに高い岩山が霞んで見えて,文字通り絵のような美しい景観をなしていました。


 Teton Park Roadから眺めたグランド・ティートンの山々。左:Teewinot Mountain (3,756m),中央:Grand Teton (4,197m),中央右:Mount Owen (3,940m),谷を隔てて右:Mount St. John (3,484m)の一部が見えます。


 Cascade Canyon の谷を隔ててグランド・ティートンの右にそびえるカセドラル・グループの山容。左:Mount St.John (3,484m),右:Rockchuck (3,396m)の山頂です。


 Jackson lake から流れ出たSnake River が南に曲がる地点 Oxbow bend から眺めた紫色に霞んだモラーン(Mount Moran, 3,842m)です。川の水面に映る秋の景色が見事でした。


 ムース地区にあるビジターセンターの近くの草原に素朴な礼拝堂「トランス・フィギュレーション教会」が建っています。祭壇の十字架の向こう側のガラス窓にはグランド・ティートンの山並みが額縁状に眺められます。


 グランド・ティートンの北東山麓にジェニー湖(Jenny Lake)があります。私たちはこの湖を shuttle boat で対岸に渡り,軽い山歩きをして Hidden Falls を見て展望台(Inspiration Point)まで行きました。この絵は対岸の湖畔から Grand Teton と Mount St. John の谷間にあるトレイル(Inspiration Point 付近)を眺めた風景で,湖水に映る山や樹木と青空が綺麗でした。


イエローストーン国立公園

 イエローストーン国立公園は全体が一つの大きな火山の火口内にあるという地形で,全地域を五つの地域に分けることが出来,それぞれ異なった趣のある風景を見せてくれます。私たちは公園内で最も大きな湖であるイエローストーン湖西岸のグラントビレッジ (Grant Village) にあるXanterra のロッジに宿泊して公園内を走り回りました。
この周辺は1988年夏に発生した大規模な山火事によって公園の36%(東京都の約1.5倍の面積)の森林が焼け野原となり,辺り一面 焼け焦げた松(Lodgepole pine)の枯れ木が立ち並び,膨大な量の倒木が散乱していますが,20年経った現在は森林が回復して,低い松の群落が枯れた森の中に広がっています。



レイク・カントリー

 イエローストーン湖の西岸にあるグラントビレッジに我々は滞在しましたが,湖の北岸にもホテルやロッジ、キャンプ場があるレイクビレッジ,フィッシングブリッジなどのエリアがあり,グラントビレッジのすぐ北のウエストサム(West Thumb)には湖畔から温泉が湧き出している噴気孔や池があります。


マンモス・カントリー

 公園の北西部にあるモンタナ州境に近い地域で,温泉が造り上げた石灰岩の広い階段状の岩棚があり,テラス・マウンテンと呼ばれています。私たちが行ったときは温泉の水が枯れて,千枚田のような石灰岩の岩棚の上を水が流れたり,溜まっていたりしている箇所が少なく,壮大な景観を期待していたので少し残念でした。


 石灰岩の階段状の溜め池が並ぶマンモス・ホットスプリング・テラスの風景。


 テラスマウンテンの裏にあるオレンジスプリング・マウンドです。地下でマグマに熱せられた炭酸水が石灰層を通過する際に石灰を溶かし込んで地上に押し上げられ,地表で炭酸ガスを放出して石灰分が沈殿・堆積して生じた小山状のテラスです。白や黄色,オレンジ色に彩られて綺麗です。


ガイザー・カントリー

 イエローストーンで最も有名な地域で,アッパー・ガイザー・ベイスン(Upper Geyser Basin),ビスケット・ベイスン(Biscuit Basin),ミッドウェイ・ガイザー・ベイスン(Midway Geyser Basin)などの温泉噴出地帯が並んでいます。中でも有名なのがオールドフェイスフル・ガイザー(Old Faithful Geyser)です。
ガイザー(Geyser)は間欠泉,ベイスン(Basin)は温泉溜まりのことで,このほか温泉(Hot Spring),噴泥泉のマッドポット(Mudpot),噴気泉(Fumarole)などいろいろの形態の熱水泉が噴気孔から蒸気を噴き上げています。オールドファイスフル・ガイザーは約70分おきに約30〜50メートルの高さに熱水を噴き上げる間欠泉で,噴出時間近くなると大勢の観光客がその周りに集まります。
間欠泉のすぐ前には,開拓史時代に造られたログ・キャビンで,国の歴史的建造物であるオールドフェイスフル・イン(Old Faithful Inn) が建ち,内部に入るとその壮大な木組みの建築構造や仕切られた部屋を見ることが出来ます。


                                                                                                                                                  約70分おきに熱水と蒸気を噴き上げるオールドフェイスフル間欠泉です。期待したほど高く上がらず,5分ほどで終わってしまいました。


 オールドフェイスフル間欠泉のすぐ脇にある木造のオールドフェイスフル・インです。1904年に完成した世界最大のログキャビンで,天井まで吹き抜けたロビーと大きな暖炉が開拓史時代の姿をそのまま留めています。


 オールドフェイスフル間欠泉群の一つグロット間欠泉が大量の熱水を噴き出しているところです。


 木造のトレールを歩いていくと一番奥に丸い朝顔の形をしたモーニンググローリー・プール(Morning Glory Pool)があり,沈殿物やバクテリアによって熱水を湛えた池の縁から深い穴の底の方まで綺麗な色彩で彩られています。


 オールドフェイスフルの北にも間欠泉・温泉地帯が広がっており,ローアー・ガイザー・ベイスン(Lower Geyser Basin)もその一つで,道路から熱水を噴き上げているのを望むことが出来ます。


 ローアー・ガイザー・ベイスンで見たバッファローの群です。十数匹の家族が群れをなして水辺や草地を移動します。温かい温泉地で寒い冬を越し,温泉プールの周囲にはその足跡や糞が沢山見られます。


 最近,最も活動的な熱水現象を示している熱水噴出地帯といわれ,そのため枯れ木も多数見られるノリス・ガイザー・ベイスン(Norris Geyser Basin)です。広々とした地域に蒸気を上げる噴気孔や熱水の池,それを取り巻く森林や遠くの山々など,どこをとっても絵になる美しい風景です。


キャニオン・カントリー

 イエローストーンの名前の由来となった黄色い流紋岩が,川の浸食によって深さ240〜360メートルのイエローストーン大峡谷を形成しています。峡谷には落差33mのアッパー(Upper Fall)と93mのロウアー滝(Lower Fall)が懸かり,イエローストーン川に沿っていくつもの展望台(View Point)があります。


 イエローストーン川はイエローストーン湖から流れ出て,野生生物が棲息するハイデンバレー(Hayden Valley)という低地を流れてキャニオンカントリーに入り,ここで38kmにわたって黄色い絶壁が続く大峡谷を形成します。これがイエローストーン大峡谷(Grand Canyon of the Yellowstone)です。


 キャニオン渓谷に懸かるロウアー滝で,写真などで渓谷の奥に見える風景がよく紹介されています。落下点横の展望台から見下ろすと滝壺に虹が架かっているのが見えました。


 ロウアー滝の落下地点の横にある展望台から対岸の急峻なグランドキャニオンの岸壁を見上げたところです。風化して崩落している岸壁の途中に「アンクル・トム・トレイル」の展望台が見えます。


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